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審判・異議申立てでWebページを証拠にする場合

原本・写しの扱いと証拠説明書

知的財産に関する審判や異議申立てでは、さまざまな資料を証拠として提出します。

特許文献、登録公報、製品カタログ、新聞記事、写真、取引資料など、事件によって必要となる証拠は異なります。

その中でも、現在の知財実務で非常に重要になっているのが、

Webページを証拠として提出する場合

です。

例えば、

  • ECサイトの商品ページ
  • メーカーの製品紹介ページ
  • 企業のホームページ
  • オンラインカタログ
  • プレスリリース
  • 技術情報を掲載したWebページ
  • 過去の販売ページ
  • SNSやインターネット上の記事

などが、先行技術、先行意匠、商品の販売状況、商標の使用状況などを示す資料として問題になることがあります。

ところが、Webページを印刷して提出すれば、それで終わりというわけではありません。

「いつ掲載されたのか」
「誰が掲載したのか」
「どのURLなのか」

といった情報を整理して、証拠としての位置付けを明確にする必要があります。

そもそも「証拠説明書」とは?

特許庁の審判・異議申立てでは、提出する証拠について証拠説明書を作成することがあります。

証拠説明書では、一般に、

  • 号証
  • 標目
  • 原本・写しの別
  • 作成年月日
  • 作成者
  • 立証の趣旨

などを記載します。

例えば、

甲1 ○○社製品カタログ 写し

というだけではなく、

「その証拠によって何を証明しようとしているのか」

まで明確にします。

特許庁の証拠説明書の見本でも、これらの事項を記載する形式になっています。

つまり、証拠は単に大量に提出すればよいものではありません。

「この資料によって、何を証明するのか」

という視点が重要になります。

Webページは特殊な証拠

Webページが紙のカタログなどと異なるのは、その内容が固定された紙媒体ではないことです。

Webページは、後から内容が変更されることがあります。

ページそのものが削除されることもあります。

URLが変わることもあります。

そして、ページを見ただけでは、

「いつ作成された情報なのか」

「誰が作成した情報なのか」

が分からないこともあります。

そのため、特許庁ではWebページについて、証拠説明書上の特別な取扱いが示されています。

掲載日と掲載者が分かるWebページ

Webページの内容から、

掲載日と掲載者が明らか

である場合があります。

例えば、企業の公式ホームページに、

「2025年4月1日 株式会社○○」

などと明確に表示されているケースです。

この場合、特許庁の取扱いでは、証拠説明書の「作成年月日」には掲載日を、「作成者」には掲載者を記載します。

そして、

「原本・写しの別」は「写し」

として扱います。

つまり、Webページそのものをプリントアウトしたものについて、

「掲載日・掲載者が分かっているから、そのWebページを出力したものは写しとして扱う」

という考え方になります。

掲載日と掲載者が分からないWebページ

これに対して、

いつ掲載されたのか、誰が掲載したのかがWebページから明らかでない

場合があります。

例えば、日付も作成者名も表示されていない商品紹介ページなどです。

この場合には、証拠説明書の「作成年月日」及び「作成者」について、

出力日と出力者

を記載します。

そして、この場合の「原本・写しの別」は、

「原本」

として扱います。

ここは、Webページを証拠として提出する場合の特徴的な取扱いです。

「Webページを印刷しただけなのに、なぜ原本になるの?」

と思われる方もいるかもしれません。

しかし、特許庁では、このような形で整理されています。

WebページのURLも重要

Webページを証拠として提出する場合には、

URLを証拠説明書の「標目」欄に記載する

という取扱いもあります。

「備考」欄を設けて、そこにURLを記載することもできます。

例えば、

株式会社○○「製品A」掲載ページ
https://www.example.co.jp/product-a/

というように、どのWebページを証拠としているのかを特定できるようにしておくわけです。

Webページは、その性質上、紙の資料以上に「どのページなのか」を特定することが重要です。

「写し」だから証拠として弱いわけではない

ここは誤解されやすいところです。

「原本」と「写し」が区別されているからといって、写しの証拠価値が当然に低いという意味ではありません。

特許庁の資料でも、文書の「原本・写しの別」は、証拠説明書における証拠の形式を整理するための重要な区別として扱われています。

重要なのは、

その資料が何を示しているのか。

そして、

その資料から、その事実をどこまで裏付けられるのか。

という点です。

したがって、

「これは写しだから証拠として価値が低い」

と単純に考えるのは適切ではありません。

「原本」と「写し」はどう違うのか

特許庁は、文書について「原本」と「謄本」を大きく区別し、そのうえで謄本には、

  • 正本
  • 認証のある謄本
  • 写し

が含まれると整理しています。

「原本」とは、作成者が一定の内容を表示するため、確定的なものとして最初に作成した文書です。

これに対して「謄本」は、原本と同一の文字・符号を用いて、原本の内容を完全に写し取った文書です。

さらに、その謄本のうち、認証のないものが「写し」です。

つまり、

原本と写しは、単純に「本物」と「偽物」という関係ではありません。

証拠として提出する資料をどのような形で提出しているのか、という問題として理解することが重要です。

Webページを証拠にするときは「何を証明するのか」を考える

知財事件でWebページを証拠として使う場合、最も重要なのは、

そのWebページから何を立証したいのか

を明確にすることです。

例えば特許事件なら、

ある技術が出願前から公開されていたこと

を立証したい場合があります。

意匠事件なら、

ある形態の商品が登録出願前から市場に存在していたこと

を示したい場合があります。

商標事件なら、

ある商標が実際に使用されていたこと

を示したい場合があります。

また、

ある商品の販売開始時期
ある企業が特定の商品を取り扱っていたこと
特定の技術・製品が公に紹介されていたこと

などを示すためにWeb情報が使われることもあります。

このように考えると、Webページの証拠化では、

「ページを印刷すること」よりも「そのページから何を立証するのか」

のほうが重要だということが分かります。

Webページは「見つけたら保存」する

知財紛争では、後になってから、

「以前、このページを見たはずなのに消えている」

ということがあります。

Webページは紙のカタログと違い、掲載内容が変更されたり、削除されたりする可能性があります。

そのため、重要なWeb情報を発見した場合には、

その時点で証拠化を検討する

ことが重要です。

URLだけをメモしておけば十分とは限りません。

後からページの内容が変更されれば、当時の表示内容を確認できなくなる可能性があるからです。

ページの保存、出力、掲載日時、掲載者、URLなど、後から確認できる情報をできるだけ整理しておくことが、知財紛争では重要になります。

特に重要なのが「公開時期」

特許や意匠などの事件では、単に「その情報がインターネット上に存在した」というだけではなく、

いつ公開されていたのか

が重要になることがあります。

例えば、ある特許出願の先行技術としてWebページを使用するのであれば、そのWebページが基準となる時点より前に公衆に利用可能となっていたことを示す必要があります。

意匠でも、

「そのデザインがいつ公知になったのか」

という時間軸が重要になる場合があります。

したがって、Webページの証拠化では、

内容+掲載者+掲載日+URL

という情報を意識して確認することが重要です。

Web情報は知財紛争の重要な証拠になる

現在の知財実務では、インターネット上に存在する情報が無視できない存在になっています。

特に、

  • ECサイト
  • メーカーサイト
  • オンラインカタログ
  • プレスリリース
  • 技術ブログ
  • ニュースサイト
  • 業界団体のWebサイト

などには、過去の商品や技術に関する情報が残されていることがあります。

特許文献だけを検索していても見つからない情報が、インターネット上から発見されることがあります。

だからこそ、知財紛争では、

特許庁のデータベースだけを見るのではなく、市場そのものを見る

という視点も重要になります。

私は、特許・意匠・商標に関する紛争案件では、法律や審査基準だけでなく、

実際の商品、技術、市場、Web情報

まで含めて事案を見ることを大切にしています。

証拠は「集める」だけではなく「設計する」

知財事件で証拠を扱うとき、

「とりあえず関係しそうな資料を全部提出する」

という考え方だけでは十分ではありません。

重要なのは、

何を立証するために、どの証拠を使うのか。

ということです。

そして、その証拠について、

  • いつの情報なのか
  • 誰が作成したのか
  • どこから取得したのか
  • 原本なのか写しなのか
  • URLは何か
  • 何を立証するのか

を整理していきます。

証拠説明書は、単なる事務的な添付書類ではありません。

事件のどの事実を、どの証拠によって立証するのかを整理するための重要な書類

でもあります。

知財紛争では「証拠の質」が重要になる

特許・意匠・商標の審判や異議申立てでは、法律論だけでなく、事実をどのような証拠によって裏付けるのかが重要です。

特にWebページは、

「簡単に見つけられる」

という便利さがある一方、

「簡単に変更・削除される」

という特徴もあります。

だからこそ、知財紛争においてWeb情報を利用する場合には、早い段階から証拠化を意識しておくことが大切です。

Webページ一枚のプリントアウトにも、

掲載日、掲載者、URL、出力日、出力者、立証趣旨

など、さまざまな情報が関係してきます。

知財事件では、このような細かな実務の積み重ねが、最終的な主張・立証を支えます。

知財紛争は、法律論だけで戦うものではありません。
証拠をどう集め、どう整理し、どう使うのか。

そこまで考えて初めて、実効性のある知財戦略になります。

参考:特許庁の資料

特許庁では、審判・異議申立てにおける証拠説明書の記載方法や、Webページを証拠とする場合の取扱いについて資料を公開しています。

実際に証拠を提出する際には、最新の特許庁の取扱いを確認することが重要です。

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