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AmazonなどのECモールで商品を販売していると、ある日突然、販売ページが表示されなくなることがあります。
その理由が、
「第三者から意匠権侵害の申し立てがあったため」
というケースです。
販売者からすれば、
「この商品は相手の登録意匠とは似ていない」
と思っていても、ECモール側では、権利者からの申告を受けて出品停止などの措置が取られることがあります。
実際に、Amazonのセラーフォーラムにも、意匠権侵害の申告を受けて出品停止となり、非侵害を説明しても再開できないという販売者からの相談が見られます。
ここで重要なのは、
Amazonによる販売停止と、法律上の意匠権侵害が成立するかどうかは、別の問題である
ということです。
では、販売者はどう対応すればよいのでしょうか。
意匠権侵害を主張された場合、最初に確認すべきなのは、
「相手方がどのような意匠権を持っているのか」
ということです。
登録番号を確認し、意匠公報を取得して、
などを確認します。
そのうえで、自社の商品と登録意匠を具体的に比較します。
単に、
「見た目が違う」
というだけでは十分ではありません。
意匠の類否判断では、需要者の視覚を通じて起こさせる美感の類否などを踏まえて判断する必要があります。
したがって、登録意匠のどの部分が要部となるのか、自社商品のどの部分と共通し、どの部分が相違するのかを整理することが重要です。
なお、国際意匠登録がされていて日本国を指定していない権利は、日本国内での販売を差し止める権利はありません。
私が実際に経験したケースとして、日本国を指定しない国際意匠登録の警告書を権利者がAmazonに提出したことに起因して、同一・類似の商品を販売する事業者の販売サイトが非表示にされてしまった事例がありました。この事例では、日本での意匠権侵害が成立しないと反論しても、なかなか商品販売ページが再開されませんでした。
根気よく、AmazonなどのECモール側と交渉していく必要があります。
結果として、商品販売の再開まで2週間前後の時間を要しました。
Amazonから販売停止を受けた場合、
「Amazonに説明すれば解除してもらえる」
と考えがちです。
もちろん、Amazonに対して非侵害であることを説明し、必要な資料を提出することは重要です。
しかし、それだけで解決しない場合もあります。
Amazonの通知では、権利者からの申立てや、商品の正当性・知的財産権非侵害を裏付ける資料などの提出が求められる場合があります。
そこで、問題をAmazonとのやり取りだけに限定せず、
「そもそも、販売停止の原因となった相手方の権利主張をどう処理するのか」
という視点が必要になります。
一つの方法は、販売停止の原因となった申告者に直接連絡することです。
自社商品が登録意匠の権利範囲に属しないと考えるのであれば、その理由を具体的に説明し、Amazonに対する申立ての取り下げを求めることが考えられます。
ただし、単なる「似ていません」という主張ではなく、
登録意匠と自社商品のどこが共通し、どこが異なるのか
を意匠の類否判断の観点から整理して伝えることが重要です。
相手方の登録意匠そのものに新規性や創作非容易性などの問題がある場合には、
意匠登録無効審判
を検討する余地があります。
これは、単にAmazonに「自社商品は侵害していない」と説明するのとは異なり、
「そもそも相手方の意匠権自体に問題がある」
という方向から争う方法です。
もちろん、無効理由が存在することが前提となります。
したがって、先行意匠の調査を行い、登録意匠の有効性を検討する必要があります。
また、意匠権成立までの手続の不備をみつけ、それを指摘して無効理由を主張する目も必要です。
そして、意匠権侵害の問題で忘れてはならない制度があります。
それが、
特許庁の判定制度です。
意匠法には、登録意匠とそれ以外の意匠との関係について、特許庁に判定を求める制度があります。
例えば、
「自社の商品デザインは、相手方の登録意匠の同一又は類似の範囲に属しない」
という趣旨の判定を求めることが考えられます。
特許庁による判定は、裁判所による侵害訴訟の判決とは異なります。
しかし、意匠の類否について、特許庁に判断を求め、その結果を得ることには実務上の意味があります。
特に、
「自社商品は相手方の登録意匠とは類似しない」
という客観的な判断資料を得たい場合には、検討する価値があります。
この判定書をもとに、Amazonや相手方と交渉するのです。
特許庁の判定を得た場合、その結果をAmazonとの交渉資料として提出することも考えられます。
もちろん、判定を取得したからといって、Amazonが必ず販売ページを再開するとは限りません。
AmazonにはAmazon独自の出品ルールや審査があります。
しかし、
「自社では非侵害だと考えています」
という販売者側の説明だけの場合と、
「特許庁による判定という公的な判断資料があります」
という場合とでは、提出資料としての意味合いが異なります。
そのため、販売再開を求める交渉において、判定結果を一つの資料として活用することが考えられます。
さらに、事案によっては、相手方による警告や権利行使の方法そのものが問題となる可能性があります。
例えば、相手方が自らの意匠権の権利範囲を超えて、競争相手の販売を妨害する目的で過度な権利行使を行っているような場合です。
このような場合には、具体的な事実関係や相手方の認識、警告の内容、権利の有効性などを踏まえ、
権利濫用や不正競争などの問題
が生じないかを検討することになります。
ただし、これは個別の事案によって判断が大きく異なります。
「非類似だった」というだけで、直ちに相手方に損害賠償責任が発生するわけではありませんので注意が必要です。
また、今後の販売を継続するのであれば、
自社商品のデザインについて意匠登録を検討する
ことも重要です。
もっとも、すでに商品を販売したり公開したりしている場合には、新規性の問題が生じる可能性があります。
そのため、公開後の出願については、新規性喪失の例外が適用できるかなど、個別に確認する必要があります。
「販売してしまったから、もう意匠登録できない」
と簡単に判断するのではなく、公開時期、公開方法、出願時期などを確認して検討することが大切です。
意匠権侵害の警告を受けた場合、
「侵害していません」
と反論するだけではなく、
など、複数の手段があります。
重要なのは、
「販売停止された=泣き寝入りするしかない」
と考えないことです。
販売停止の原因を特定し、その原因となっている知的財産権について、法律上どのような対応が可能なのかを一つずつ検討していくことが重要です。
Amazonで商品を販売している事業者にとって、販売ページの停止は、そのまま売上の停止につながる可能性があります。
だからこそ、
「しばらく様子を見よう」
ではなく、早期に登録意匠を確認し、類否判断を行い、必要な対応を検討することが重要です。
意匠権侵害の問題は、単純な「似ている・似ていない」の問題ではありません。
意匠権、ECプラットフォーム、事業継続、そして紛争対応。
これらを一体として考える必要があります。
私は現在、意匠の判定請求にも積極的に取り組んでいます。
意匠権侵害の警告を受けた場合には、Amazonへの対応だけでなく、特許庁の判定制度を含め、どのような手段を組み合わせることができるのかを検討することが重要です。

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