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付記弁理士 西村 知浩
英語力は世界市場へのパスポート
「今さら英語なんて勉強しても遅いのでは?」
そんなふうに思う人もいるかもしれません。
しかし、私は54歳になってから、中学英語の学び直しを始めました。
弁理士として25年以上、知的財産の世界で仕事をしてきました。
30歳で独立開業し、仕事もコネもお金もないところから、自分一人で事務所を経営してきた人間です。
これまで、特許や商標をはじめとする知的財産の実務に携わり、国内外の案件に取り組んできました。
それでも、私は自分の能力が完成したとは思っていません。
むしろ、これまでの実務経験があるからこそ、もっとできることがあるのではないかと考えています。
現在は、司法書士試験の勉強にも取り組みながら、英語、中国語、韓国語などの外国語も学んでいます。
なぜ、これほど年齢を重ねてから、新しい勉強を始めるのか。
理由は明確です。
自分の可能性を、自分で狭めたくないからです。
年齢を理由に諦めるのではなく、今の自分に必要な能力を考え、少しずつ身につけていく。
私は、そんな生き方を選びたいと思っています。
私が英語を学び直している大きな理由の一つは、海外のクライアントと、自分の言葉で直接コミュニケーションを取りたいからです。
知的財産の仕事では、海外の企業や発明者、外国の代理人など、さまざまな人々と関わる機会があります。
外国語の文書を扱うこともありますし、海外の関係者と意思疎通を図る必要もあります。
もちろん、専門的な翻訳や通訳が必要な場面では、それぞれの専門家の力を借りることも大切です。
法律や技術に関わる重要な内容について、すべて自分だけで対応しようとする必要はありません。
しかし、経営者として、もう一歩先を目指したいのです。
海外の企業経営者や発明者と直接話す。
相手の表情や反応を感じ取り、その場で質問し、その場で考え、自分の言葉で返答する。
そうしたコミュニケーションができれば、仕事の進め方にも新しい可能性が生まれます。
相手が何を求めているのか。
何を不安に感じているのか。
どのような解決策を望んでいるのか。
こうしたことを理解するためには、専門知識だけでなく、コミュニケーション能力も重要です。
語学力があれば、すべての問題が解決するわけではありません。
しかし、直接対話できることによって、理解を深めたり、信頼関係を築いたりする機会を広げられる可能性があります。
私は、語学を単なる教養や趣味として捉えているわけではありません。
自分の仕事の可能性を広げるための投資だと考えています。
経営者にとって、自分自身の能力は重要な経営資源です。
設備に投資する。
業務環境を整える。
新しいサービスを開発する。
それらと同じように、自分の知識や技能を高めることにも意味があります。
特に、一人で事務所を経営する私にとって、自分自身の能力を磨くことは、事業の将来にも関わる取り組みなのです。
英語を学び直すと決めたとき、私は難しい専門書や高度な英文法から始めたわけではありません。
中学英語からスタートしました。
be動詞、一般動詞、現在形、過去形。
本当に基礎の基礎です。
長年、専門家として仕事をしてきた人間が、中学英語から勉強する。
人によっては、遠回りに見えるかもしれません。
しかし、私は基礎をおろそかにしたくありませんでした。
難しい単語を覚えることや、複雑な英文を読むことだけが、英語力の向上ではないからです。
自分が伝えたいことを、簡単な言葉で表現できる。
相手の質問を理解する。
分からないときには聞き返す。
相手の話を聞いて、必要なことを確認する。
実際のコミュニケーションでは、こうした基本的な能力が欠かせません。
そして、基礎を理解していなければ、応用力を伸ばすことも難しくなります。
これは、知的財産の実務にも通じるところがあります。
特許法や商標法の条文を理解し、審査基準を確認し、判例を読み、具体的な事案に当てはめる。
専門家として経験を積んでいても、基本に立ち返ることは大切です。
経験があるからこそ、基本の意味が以前より深く理解できることもあります。
語学も同じなのではないでしょうか。
中学英語を学び直すことは、過去に戻ることではありません。
これから先の自分のために、土台をつくり直すことなのです。
英語を学び直して、私が改めて実感したことがあります。
それは、最初から完璧な英語を話せる必要はないということです。
以前、外国人クライアントと英語で話す機会がありました。
もちろん、流暢な英語が話せたわけではありません。
文法も完璧ではありません。
それでも、知っている単語と基本的な英文を組み合わせながら、一生懸命に伝えることで、会話を成立させることができました。
その経験は、私にとって大きな意味を持ちました。
「完璧でなければ話してはいけない」という考え方から離れられたからです。
もちろん、専門的な法律問題や契約条件など、正確な理解が求められる場面では慎重さが必要です。
曖昧なまま重要な事項を確定させることはできません。
しかし、日常的なやり取りや意思疎通のすべてについて、最初から完璧さを求める必要はないでしょう。
相手の話をよく聞く。
簡単な言葉で伝える。
分からなければ質問する。
必要に応じて、文書や翻訳ツールなども活用する。
こうした工夫を積み重ねることで、コミュニケーションの可能性は広がります。
私は、実際に話してみたことで、中学英語が単なる学校の勉強ではなく、仕事にもつながる実用的な知識であることを実感しました。
学んだことを実際に使う。
そして、使ってみて分かった課題を、次の学習に生かす。
この繰り返しが、実力を高めるための一つの方法だと思っています。
独立開業すると、日々の仕事に追われがちです。
目の前の依頼を処理し、お客様に対応し、期限を守り、経営を維持する。
それだけでも、十分に忙しい毎日になります。
特に、一人で事業を運営している場合、自分が仕事をしなければ、仕事は進みません。
だからこそ、意識して自分の能力を高める時間を確保することが大切だと考えています。
毎日の業務をこなすだけでは、今ある能力を使い続けることはできても、新しい能力を身につける機会は限られてしまいます。
もちろん、勉強すれば必ず売上が増えるわけではありません。
新しい資格を取得したからといって、それだけで経営がうまくいくわけでもありません。
学んだ知識を、どのように仕事に生かすのか。
どのような価値をお客様に提供できるのか。
そこまで考えることが重要です。
私が英語を学ぶのも、司法書士試験の勉強をするのも、単に知識を増やしたいからではありません。
自分の仕事の幅を広げたい。
新しい可能性をつくりたい。
これまでとは違う形で、お客様のお役に立てるようになりたい。
そんな思いがあります。
独立開業したときの自分と、現在の自分では、経験も知識も大きく異なります。
しかし、これまでの経験だけに頼り続けるつもりはありません。
過去の実績は大切な財産です。
けれども、過去の実績だけで、これから先の可能性まで決まるわけではありません。
今の自分に何が足りないのかを考え、必要な能力を身につける。
その積み重ねが、専門家としての将来をつくっていくのだと思います。
「もう若くないから、今さら勉強しても仕方がない」
そんな言葉を耳にすることがあります。
しかし、私はそうは思いません。
確かに、年齢を重ねれば、若い頃と同じようにはいかないこともあるでしょう。
仕事や生活の事情によって、使える時間にも限りがあります。
だからといって、新しいことを学ぶ意味がなくなるわけではありません。
むしろ、これまでの経験があるからこそ、何を学ぶべきか、なぜ学ぶのかを具体的に考えられることもあります。
私には、弁理士として積み重ねてきた実務経験があります。
その経験を土台に、語学力を高める。
法律についてさらに学ぶ。
自分の考えを文章にして発信する。
それぞれの取り組みは、別々のものに見えるかもしれません。
しかし、私の中ではつながっています。
自分の能力を磨き、仕事の可能性を広げ、これまで培ってきた経験を、今まで以上に多くの人の役に立てる形にしていく。
それが、私の目指している方向です。
50代になったから、これからは現状維持でよい。
そんなふうには考えていません。
人生の残り時間を考えれば、何でも無制限に挑戦できるわけではありません。
だからこそ、自分が本当に取り組みたいことを選び、時間を使っていきたいと思っています。
新しいことを始めるのに、遅すぎるということはありません。
ただし、始めなければ何も変わりません。
まずは基礎から学ぶ。
小さな目標を立てる。
実際に使ってみる。
そして、少しずつ前へ進む。
私は、そんな地道な積み重ねを大切にしています。
私の目標の一つは、海外のクライアントとも、より直接的にコミュニケーションを取りながら、知的財産の仕事を進められる弁理士になることです。
そして、司法書士試験の勉強にも取り組み、法律に関する知識をさらに深めていきたいと考えています。
もちろん、目標を掲げることと、それを実現することは別です。
資格の取得にも、語学力の向上にも、継続的な努力が必要です。
それでも、目標があるからこそ、今日やるべきことが見えてきます。
中学英語の基礎を学ぶことも、法律の条文を読むことも、一見すると小さな作業です。
しかし、その小さな作業の積み重ねが、数年後の自分をつくっていくのだと思います。
私は30歳で独立開業しました。
コネも仕事もお金もないところから始め、自分一人で事務所を経営してきました。
そして54歳になった今も、新しいことを学んでいます。
専門家として経験を積んだからこそ、学ぶことをやめたくありません。
経営者として仕事を続けているからこそ、自分自身への投資を大切にしたいのです。
語学も、法律も、経営も、一朝一夕で身につくものではありません。
だからこそ、焦らず、基礎を大切にしながら、一歩ずつ進んでいきます。
世界は、思っているほど遠くないのかもしれません。
必要なのは、最初から完璧であることではなく、まず一歩を踏み出すこと。
私はこれからも、自分の可能性を自分で決めつけず、学び続けていきます。

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