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付記弁理士 西村 知浩
先日、国内優先権を主張する特許出願の明細書起案が完成しました。
今回の案件では、日本語の明細書等が10万文字を大きく超え、請求項は約60項、そのうち独立請求項が約30項、図面も約50図に及びました。
また、別件ではPCT出願に向けて、20万文字に迫る規模の明細書について、日本語から英語への翻訳作業も進めています。
もちろん、特許明細書は長ければ良いというものではありません。
重要なのは、その発明について、将来の権利化や権利行使まで見据えた構成になっているかです。
私は、特許明細書を作成するとき、単に「今回の特許査定を得る」ことだけを考えているわけではありません。
将来、その特許に対して異議申立てや無効審判が請求される可能性もあります。
また、権利化の過程で補正を行った結果、後になって訂正の選択肢が狭くなることもあります。
そのため、出願段階から、
「将来、どのような訂正が必要になる可能性があるのか」
まで考えながら、請求項や明細書の記載を検討します。
必要に応じて複数の独立請求項を設け、それぞれ異なる技術的観点から権利化を目指すこともあります。
これは、目先の特許査定だけを見るのではなく、将来の権利の使い方まで考えて出願するという発想です。
私は、特許明細書を単に発明を説明するための文書だとは考えていません。
まず重要なのは、
「この発明の技術思想の本質は何なのか」
を見極めることです。
そして、その技術思想を中心として、
などを検討していきます。
もちろん、何でも明細書に詰め込めばよいわけではありません。
公開する技術情報と、企業のノウハウとして秘匿すべき情報を区別することも重要です。
特に営業秘密として管理すべきノウハウまで、安易に特許明細書に記載することは適切ではありません。
私はよく、
「特許明細書はカレーのようなもの」
と表現します。
中心となるスパイスがあります。
それが、発明の技術思想です。
そこに、さまざまな具材やスパイスを組み合わせていく。
一つの実施形態だけではなく、その周辺に存在する技術的な選択肢まで検討しておくことで、将来の権利化の可能性が広がります。
ただし、何でも入れれば美味しくなるわけではありません。
特許明細書も同じです。
何を記載し、何を記載しないのか。
その判断が重要になります。
私が目指しているのは、単に特許の数を増やすことではありません。
事業を支える知財をつくることです。
競合他社との競争において事業を積極的に優位にするための「攻める特許」。
そして、自社の技術や事業を守るための「守りの特許」。
この両方を意識しながら、経営者の方と一緒に知財戦略を考えていきます。
そのためには、発明者から技術内容を聞くだけでは足りません。
その技術が、
現在どのような事業に使われているのか。
競合他社はどのような技術を使っているのか。
将来、どの方向に事業を展開する可能性があるのか。
そこまで理解したうえで、どのような権利を取得するのかを考える必要があります。
こうして発明の本質を掘り下げ、将来の権利化まで考えて起案していくと、結果としてボリュームのある明細書になることがあります。
もちろん、すべての案件で長大な明細書が必要なわけではありません。
重要なのは、案件ごとに必要な情報量と権利化戦略を見極めることです。
特許出願は、単に書類を提出する作業ではありません。
将来の事業を守り、競争力を高めるための知財投資です。
私は、経営者の方々と一緒に発明の本質を掘り下げ、
「この発明を、将来どのような知財に育てていくのか」
まで考えながら、特許明細書を作成しています。
それが、私の考える「強い特許明細書」です。

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