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知財活動は、企業活動の一部として行われるものであり、企業が抱えている経営上の課題に対して成果をあげ、その成果が経営上の課題を解決するという形に結びつくことが期待されるものです。
具体的として、以下のような事例が考えられます。
ある経営課題に関し、知財活動を進めることによって成果を上げることができると判断する。
その成果に結びつけるための知財活動の計画を立て実行する。
知財活動の実践の過程で生じるさまざまな問題の要因を取り除き、計画を実現性あるものに修正する。
経営課題が知財活動の成果によって解決しているかを確認・評価する。
知財活動に取り組む中小企業では、知財活動による経営上の成果を十分に実感できていないというケースもあります。こうした企業では、経営課題に対して知財活動が成果を生むという、効果的なループをうまく作り出すことができていないようです。
経営課題を解決するという意味において、効果的な知財活動が実践できない理由には、次の3つのパターンをあげることができます。
①経営課題と知財活動が結びついていない理由
経営課題に対して知財活動により成果が上がると判断する工程に誤りがあります。
➁知財活動に何らかの理由があって成果に結びついていない理由
成果に結びつく知財活動の計画が適切でなかったか、知財活動の実践で生じる問題の要因を取り除けていない可能性があります。
➂経営課題を解決する手段として知財活動に気づいていない理由
知財活動を再検討する必要があります。
「経営課題と知財活動が結びついていない」という事例では、知財における「課題⇒成果」が、経営課題と関わりなくループしていることが原因。
例えば、「出願件数が少ない」という課題に対して、発明者への特許教育や発明提案の仕組みを強化し、「出願件数の増加」という成果に結びついたものの、その企業の主力製品とあまり関連のない部分で出願が行われていたために、収益面において何の成果も生じていない、というケース。
このようなケースにおいては、経営課題の中から知財活動で解決できる課題を的確に設定すること。すなわち、経営課題を出発点に考え、経営課題に対して成果を上げることができるような知財活動を設計する必要があります。
「知財活動に何らかの問題があって成果に結びついていない」という事例では、知財における課題の設定は、経営課題に沿って的確に行われているものの、何らかの理由でその活動が円滑に進んでおらず、活動の成果が得られないということが原因。
例えば、中小企業の技術部の責任者が知財の重要性を理解していないケース、技術部の発明者が多忙であり、知財活動を進めめ時間がないケースなど、企業内部の人が知財活動に協力できない何らかの理由があると考えられます
このようなケースにおいては、経営課題を解決するために、知財活動が必要であり、全社的に進めていくという認識を企業内で共有することが重要です。
外部の弁理士だけの力では及ばないため、例えば企業の代表者が企業方針として知財活動を進めることを全社員に伝えて知財活動への協力をお願いするとともに、知財活動の成果に対して評価する社内評価制度の構築が有効です。
スタートアップにとって有効な特許出願戦略のひとつとして、国内優先権制度の利用があります。
国内優先権制度とは、先の特許出願の出願日から1年以内であれば、発明を追加するなどして先の特許出願の内容を適法に変更することができる制度をいいます。
通常、特許出願を行うと、後日の補正により、その特許出願の内容に新しい発明を追加することは一切認められていません。このため、先の出願後に新しい発明を創作した場合には、別の特許として、新たに特許出願する必要があります。このとき、後の特許出願の審査において、自身の出願である先の特許出願を引用されて拒絶されることがあり、出願人にとって不幸な事態になってしまいます。
そこで、国内優先権制度は、このような問題を解消するために、認められた制度です。
先の特許出願の出願日から1年以内の期間であれば、複数の新しい発明を追加することができます。もちろん、先の特許出願の内容の一部を削除したり、変更することも可能です。
国内優先権制度を利用した法的効果は、先の特許出願の出願日を基準に特許性が判断されることになります。もちろん、国内優先権主張を伴う特許出願で追加した発明については、国内優先権主張を伴う特許出願日が特許性の判断の基準になります。このため、発明の幹となる技術思想については、先の特許出願の明細書に開示しておくことが効果的です。
なお、国内優先権制度を利用した場合でも、発明の単一性を具備する必要がありますので、特許請求の範囲の記載の仕方については注意が必要です。
国内優先権主張は、以下の3つのタイプにわけられます。
特許請求の範囲に記載された上位概念に変更はないが、研究開発を続けた結果、特許出願済みの明細書に記載していない発明の実施形態を開発したという事例。
出願済みの明細書の実施例では特許請求の範囲に記載した上位概念のサポートに不安があるため、新たに国内優先権を主張して出願し、明細書の実施例を補充して、出願済みの特許請求の範囲を完璧にサポートしたいと考えたとき、実施例補充型の活用が可能になります。
先の出願1で、実施例a1(塩酸)、特許請求の範囲A0(無機酸)として出願。
後の研究開発において、実施例a2(硝酸)でも、クレームA0をサポートできることが判明しました。しかも、実施例a1(塩酸)だけでは、クレームA0を十分にサポートできないかもしれないという不安もありました。
このような場合、実施例a2(硝酸)を明細書に加えて、先の出願1の出願日から1年以内に新しい出願2を行い、その際に国内優先権を主張しました。これにより、クレームA0(無機酸)の幅を維持できる可能性を高めることができました。
このような活用方法が実施例補充型です。
一連の研究開発の過程において、具体的に発明が完成する都度、特許出願していましたが、これらの複数の発明を基礎として新しい包括的な着想(上位概念)が得られ、これらをまとめて出願する場合に、上位概念抽出型の活用が可能になります。
出願1:a1=実施例(塩酸)、A1=クレーム(塩酸)
出願2:a2=実施例(硝酸)、A2=クレーム(硝酸)
出願3:a3=実施例(酢酸)、A0=クレーム(酸)
出願1でクレームA1(塩酸)を実施例a1(塩酸)でサポートし、出願2でクレームA2(硝酸)を実施例a2(硝酸)でそのままサポートしました。
その後、継続的な研究開発の結果、a3(酢酸)でも成功したので、出願3のクレームを出願1と出願2のクレームを含めた上位概念のクレームA0(酸)として、国内優先権を主張して出願3を行いました。
このような活用方法が上位概念抽出型です。
一連の研究開発の過程において、具体的に発明が完成する都度、特許出願していましたが、これらの複数の出願が「物とその物を生産する方法の発明」「方法とその方法の実施に直接使用する機械」など発明の単一性の「単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係」にあり、これらを一つに集約して出願する場合に、一出願集約型(併列出願型)の活用が可能になります。
出願1:物の発明
出願2:その物を生産する方法の発明
※両発明は、発明の単一性を具備します
出願1を出した後、研究開発を続けた結果、出願2も出すことができました。
出願1と出願2は、「物とその物を生産する方法」「方法とその方法の実施に直接使用する機械」など、特許法上の発明の単一性を満たすものであるため、これらをまとめて出願3を行いました。
このような活用方法が一出願集約型(併列出願型)です。
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